宗教センターニュース(2017年9月1日発行)
中学校聖書科 大門 耕平
「たゆまず善を行いましょう。飽きずに励んでいれば、時が来て、実を刈り取ることになります。」
(ガラテヤの信徒への手紙6:9)
平和をつくる人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる。(マタイ5章9節)
多様性が求められる時代を迎えております。そして、多様性の捉え方が近年変わってきております。以前は、多様であることが求められました。個性を持つことのように、自分自身の在り方が問われる時代でありました。現在は、多様な価値観を持つ者同士が共に生きるという視点、すなわち、多様性を受け入れる力が求められています。
ヴォーリズ学園の教育の柱の一つは、国際人教育であります。これは、1905年にさかのぼります。ヴォーリズ学園の設立の起源である八幡商業学校でのバイブルクラスでの教育から脈々と受け継がれております。
この国際人教育の始まりの歴史を振り返りますと、そこには、国際的に活躍する生徒を育てたいというヴォーリズ先生の思いとともに、もう一つの思いがあったことがわかります。それは、生徒の中にあった「学びたい」という熱意であります。当時の八幡商業学校の生徒の1/3は、渡米してビジネスの分野で活躍するという希望を持っていたことが資料に残されております。
すなわち、ヴォーリズ学園の国際人教育は、教える側、学ぶ側の熱意が合わさったところで生み出されたということです。教えたいという強い思い、そして学びたいという熱意があり、国際人教育が成立し、今まで受け継がれているわけであります。どちらか一方ではここまで大きなものにはならなかったかもしれません。
では、国際人になるためには、何が必要なのでしょうか。それは多様性を受け入れる力を身につけることです。
昨年10月、近江兄弟社中学校生徒会の生徒ともに、同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授 内藤正典先生に取材をする機会がありました。その中で、内藤先生は、多様性を受け入れるモデルがこの近江八幡にあると教えてくださりました。それは、1905年に来日したヴォーリズ先生を受け入れた近江八幡の人々のあり方です。
内藤先生は、次のように語られました。「今の学校教育は、グローバル化とか、世界で活躍するとか、国際的な人物になることに力が入れられていると思うのだけど、それは言語だけではないですからね。もちろん英語とかちゃんと勉強したほうがいいのですよ。でももっと大切なこと、特に近江八幡の学校で学生時代を過ごす君たちにとって重要なことは、近江八幡がどうやって異文化を受け入れたのかってことを調べて、考えて、答えを見つけて、それを身に着けることです。外国に行くよりも、はるかにグローバルな力を手に入れられると思いますよ。」
国際人になること、多様性を受け入れること、今の時代、平和を構築するためにもこの力が必要とされます。この力を身につけるために、日々の学習を積み重ねると共に、このヴォーリズ学園の歴史の中にある多様性を受け入れた先達の歴史を学んでください。