受験生サイト

デジタル地の塩

校長通信

2019/07/19
「守破離」の戒め(term2終業にあたって)

安土桃山時代の茶人、千利休は、それまでの茶会にみられた華やかな宴を楽しむ風潮を排し、より精神性を重んじた「侘び茶」を完成しました。その茶の湯の心得や作法に関するいわば100カ条を和歌の形式で表した「利休百首」が残されています。

第一首目は、「その道に 入らんと思う心こそ 我が身ながらの 師匠なりけれ」(自分から習ってみようと思う気持ちがあれば、その人の心の中にはすでに師匠ができている)。そして第二首では、「習いつつ 見てこそ習へ 習わずに 善し悪し言ふは 愚かなりけれ」(自分で習いもせずに善し悪しを口にするのは愚かだ)。いずれも、茶道に限らず物事を学ぶに際しての心構えを説いています。
しかし、利休が最後の百首目として詠んだ一句は、少し趣が違っています。
「規矯(きく)作法 守りつくして破るとも 離るるとても 本(もと)を忘るな」この句の「守る」「破る」「離れる」の3文字を取って「守破離(しゅはり)」の戒めと言われています。この戒めは、茶道のみならず、文武両道の様々な世界で、道を極めるために欠かせない志の持ち方として語り継がれている言葉です。

最初の「規矯」は規則や規範、決まりごとを表します。だからこの歌は、まずその世界での規則や作法、師の教えを、ひたすら正確・忠実に守って習得する。「守る」段階。
次に鍛錬と経験を積み重ねたら、それまで身につけたものを洗練させ、自分なりの個性を作り出すことに挑戦する。「破る」段階
さらにこれまでの経験や知識に捉われず、独自の境地を切り拓いてゆく「離れる」段階という「修行の3段階」を説いています。

さて、中学3年生の皆さんはいよいよこの夏、今まで取り組んできたクラブ活動の集大成、最後の大会やコンクールを迎えます。
先輩達の姿に憧れ、始めたクラブ活動。最初は先輩達の姿を見よう見まねでやってはみるもののできないことが多く悔しい時期もありました。それでも頑張って、練習を重ね少しずつできることも増え、自分の得意なこと、チームでの役割も意識できるようにもなりました。そしてこの夏、同じ目標、志をもつ仲間たちと中学校生活最後の大会、コンクールに臨みます。
参加する皆さんが、それぞれに100%の力が発揮できるように心と体を整えて頑張ってほしいと思います。心から応援しています。
しかし、万が一上手くいかず心が折れそうになったときには思い出してください。先生や先輩に教えてもらい繰り返し取り組んだ基礎基本、活動を通して知ることができたクラブ活動の楽しさ、仲間と共有してきた熱い想い、それらはきっとあなたに今すべきことを示し、勇気を与えてくれると思います。

利休があえてこの歌を百種の締めくくりに揚げることで伝えたかったのは、末尾の「本を忘るな」(基本を忘れてはならない)戒めではなかったかと思います。
どんなに上手くなり、熟練したとしても、壁にぶつかったとき、新たな局面を迎えたときにはやはり初心に立ち返り、基礎基本に立ち返ることが必要なのです。

皆さんの健闘を祈ります。

ページトップへ
ページトップへ