2007年「国旗・国歌法に対する学園の方針」を発表しましたが、その後、さらに激変した情勢、危機的な時代にあって、ヴォーリズ学園の根本的な考え方を整理し、「願い」として、関係者に伝えておきたい。まず教職員のゆるやかな意志統一を計りたいと思います。

  • 政教分離の原則(学校は教会ではない)に従い、まず憲法の要点をおさえます。日本国憲法は、第二次世界大戦終了時のわが国と国際社会との約束ですから、前文に記された理念を守らなければなりません。
  • 憲法前文第一段落の理念は、「再び戦争の惨禍が起こることのないやうにする」「主権が国民に存する」「これは人類普遍の原理であり」「これに反する一切の憲法、法令及び勅令(ちょくれい)を排除する」ということです。
  • 憲法前文第二段落の趣旨は「平和主義」、第三段落は「他国の尊重」「自国の主権を維持して、他国と対等関係に立つことは各国の責務である」としています。
  • 憲法前文の結びは、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と宣言しています。この理想は、100年経っても、200年経っても不変であるべきだと、ヴォーリズ学園では考えます。
  • 憲法第一章は、「天皇は、日本国の象徴」とうたっています。天皇は「国民の総意に基く」「国民統合の象徴」です。戦後の皇室が象徴天皇のありかたを真摯に求め、平和、国際友好、人道主義に尽力されたことに敬意を表します。ヴォーリズ学園は、いかなる時代にあっても「平和、国際友好、人道主義」の立場を貫きます。
  • 憲法第二章「戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認」は、日本国憲法の最大の特色であり、国際社会の理想とする定めですから、これを守り続けることを念願いたします。
  • 核兵器は地球上もっとも残虐な兵器です。我々は国連の核兵器禁止条約を支持します。また核エネルギーを利用した産業も、その廃棄物を確実に処理できない以上、認めることはできません。早期に禁止・廃絶することを望みます。
  • 憲法第三章「国民の権利及び義務」は、国民自ら守らなければならない規定です。基本的人権、個人の尊重、平等、思想・信教・表現の自由等、ヴォーリズ学園として積極的に擁護する姿勢が必要であると考えています。
  • 日の丸・君が代は、国旗及び国歌に関する法律(1999年制定)に定められたものとして、外国の国旗・国歌と同じように扱いますが、その掲揚・斉唱を強要されません。私たちは、キリスト教等の平和主義、民主主義が蹂躙された歴史を忘れてはなりません。
  • ヴォーリズ学園はキリスト教主義であり、宗教多元(共存)主義です。信仰上、矛盾を感じる方がありますが、社会変化の段階において常に矛盾が生じます。とりわけグローバリズムによる多様な文化、多様な価値観が存在する現代社会においては、矛盾する諸要素を統合的に発展させる哲学(すなわち「平和を実現する」思想)が必要です。
  • ヴォーリズ学園は私立学校ですから、「自主」を保障されるとともに、「自立」の責任があります。多様な考えを持つ生徒・保護者・教職員が、すべてを自分たちで考え、決定し、実行していかなければなりません。寛容と忍耐が必要です。そこにキリスト教主義の本質があります。