「ヴォーリズ来日
120年にあたり」

ヴォーリズ学園 理事長 藤澤俊樹
ヴォーリズ学園 理事長 藤澤俊樹

「ホームシック。寒い、頭痛がする。寂しい。しかし、もう来てしまったのだ」

(1905年2月2日のヴォーリズの日記より)

120年前、日露戦争中の寒い冬の日、青年ヴォーリズは不安のなか近江八幡駅に降り立ちました。それから83歳で亡くなるまで、この地を愛し、この地に「愛と平和に満ちた 共に生きる社会」を建設する事業を精力的に展開しました。

ヴォーリズさんの「こころざし」を引き継ぎ、その実現のための「ひと創り、まち創り」に取り組むのがヴォーリズ学園です。本学園は、そんな使命感のもと、「ヴォーリズみらい構想」と題したプロジェクトに取り組んでおりますが、プロジェクトも、「ホップ」(構想段階)から「ステップ」(企画・検討段階)と進み、いよいよ「ジャンプ」、本格的なスタートの段階へと進みます。この1~2年が正念場。学園の総力を結集して全力で取り組みます。

この間、地域の皆様、卒業生・保護者の皆様、さらには全国のヴォーリズファンの皆様の熱いご支援をいただいてまいりました。こんな幸せな学園はないと感謝いたしております。引き続きのご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。

以下、「ジャンプ」段階に入った「ヴォーリズみらい構想」の進捗状況・展望について報告させていただきます。

「VORIES SPRIT」が息づく学園に!
→「ヴォーリズ コモンズ構想」

世界中で紛争が絶えず、社会の分断が進んでいます。今こそ、自他を愛し、偏見や思い込みから解放された真の自由人・教養人の育成が求められます。本学園は、当時の画一的な教育を打破し、ヴォーリズ等の「こころざし」達成のために創立された学園です。真の自由人・教養人育成のための教育の先頭に立つ気概を持って、教育や学校の在り方の抜本的な改革に挑みたいと思います。

まずは「いのちを大切にする教育」を学園の教育・保育の軸とし、過度な競争教育から脱却し、子どもたち・青年たち一人一人が大切にし、安心して学び、生活できる学園づくりを進めます。

学びのカタチも一方的な「知識の伝達」から「主体的に学び、仲間と考え、発信する」という学習スタイルへの大転換が求められます。議論しあう関係こそがこれからの社会に重要になるからです。

幸い本学園には地域と連携した「探究学習」の積み重ね、数多くの姉妹校との交流や海外の大学への進学などの「国際人教育」の伝統があります。これらは.本学園の強みとして、ますます充実させたいと思います。

同時に、そんな新しい学びのステージとして、「ラーニングコモンズ」として建て替える「恵愛館」を軸に、学園施設全体を見直し、再整備するプロジェクトを進めます。学校とはどういう場であることが求められているのか、考え続けながら、生徒たちがワクワク感を持って何かを「見つける」、仲間と「つながる」、そして自らの考えを「ふかめる」、そんな学びの空間を創りあげたいと思います。

「VORIES SPRIT」顕彰の拠点を!
→「ヴォーリズ ミュージアム構想」

一昨年10月より、学園内に残るヴォーリズ建築、ハイド記念館の土日祝日も含めての公開を始めました。この間、「茗荷恭介作品展」、滋賀県立大学ヴォーリズ研究会による「ヴォーリズ建築図面展」、「ヴォーリズと芸術展」「ヴォーリズ建築写真展」「特別展ヴォーリズの来日」「ヴォーリズ建築写真展VORIES TIME」と展示会を続けてまいりました。併せて「ヴォーリズ建築撮影会」や「ヴォーリズマルシェ」などのイベントも開催しました。その結果、入館者数も4,000名を突破しました(2025年4月末現在)。また今後も、7月より「ヴォーリズと平和展」、9月より大同生命さんによる特別展「浅子とヴォーリズ」などの企画も準備中です。

今後も、こうした努力を重ねながら、基礎補強工事を施し、地元の行政や諸団体で構成する「保存活用推進協議会」等のご支援も得て、「ヴォーリズミュージアム」として整備したいと考えております。学園や近江兄弟社のみならず地域の宝として、ヴォーリズを永く顕彰すると共に、「ヴォーリズの町」の拠点となればとの思いです。

「VORIES SPRIT」継承の新事業
→「ヴォーリズ みらいビレッジ」構想

ヴォーリズ学園は、近江兄弟社中学校、近江兄弟社高等学校、、近江兄弟社ひかり園、もりの風こども園、そらの鳥こども園、ほしの恵みこども園、安土ののはな保育園、ふるたか虹のはし保育園を運営しています。他に、近江八幡市内に「浅小井校地」「北之庄校地」を所有し、中学校・高等学校のクラブ活動や体育の授業・課外活動で活用しながら、空いている場所・時間を地域の活性化のために使っていただければとの思いで、「ヴォーリズみらいビレッジ」と名付けて、活用を進めています。「有限会社ウエスト」による、子どもさんやその保護者のための「つながルームイベント」に加えて、「貸棚こども書店」「自費出版ライブラリー」など新規事業もスタートします。また人工芝グラウンドでは「一般社団法人FCヴォーリズ」による「キッズフェスティバル」やサッカー事業などが展開されています。さらには「一粒社ヴォーリズ建築事務所」の図面資料庫、「滋賀YMCA」のスポーツ事業、「しが盲ろう者友の会」の活動等の拠点にもなっています。その他、造形教室、近隣の企業「メニックス」の活動など活発な活動のステージになりつつあります。北之庄校地の「ヴォーリズの森」での事業やアクセス改善、スクールバス事業の拡充などの課題も含め、今後、ヴォーリズの「こころざし」を引き継ぐための新たな事業・プロジェクトとして取り組んでまいります。