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リオデジャネイロオリンピック銅メダリスト乾 友紀子氏
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校長藤澤 俊樹

ヴォーリズ精神から学んだこと

校長乾さんは近江兄弟社高校時代、毎日、大阪までシンクロナイズドスイミングの練習に通っていたそうですね。

練習場所までは片道2時間余り。放課後、5時半から夜9時まで練習し、帰宅するのはいつも夜11時を回っていました。

校長本当にがんばり屋ですね。本学園創立者のヴォーリズさんも、アメリカから単身、近江八幡にやってきて、困難にも負けず、この地に留まり、その志を胸に、生涯を全うしました。人生には歯を食いしばって乗り越えなければならない「がんばり時」がある。本校の生徒にもそう教えたいと思っています。乾さんにとっての「がんばり時」はいつでしたか

初めて日本代表に選ばれてから数年間、世界の大会でメダルを取れなかった時です。「メダル常連国」としての歴史を傷つけてしまったという負い目を感じながら、どうすればいいのかもわからず、目標を見失いかけました。変わったのは、今も指導を受ける井村雅代先生が日本代表監督に復帰されてから。「オリンピックでメダルを取りたい」と、再び前向きに目標を見据えられるようになりました。それまでとは比べものにならないほど厳しい練習で、できないことを常に求められましたが、それは苦痛ではありませんでした。

校長厳しい練習より苦しいのは、目標を失うことなのですね。ところでオリンピックは、世界中のアスリートが集う「平和の祭典」とも言われます。ロンドン、リオデジャネイロと2度、「平和の祭典」に参加して、思うことはありますか。

オリンピックが他の世界大会と最も違うのは、世界中のたくさんの人たちが見るというところです。今日本は平和だけれど、戦争中の国の人々もオリンピックを見てくれているかもしれない。オリンピックで演技する時は、そうしたことも考えました。

校長その意味では、乾さんたちオリンピック選手は「平和の使者」としての役割も果たしているかもしれませんね。本校では、世界で活躍する「国際人」になるには「平和教育」が大切だと考えています。海外研修旅行もその一環です。

中国の南京へ海外研修旅行に行った時、現地の人々から注がれた厳しい目を今でも覚えています。でもその一方で、ホームステイ先や南京外国語学校の生徒と交流し、思いやりや温かい気持ちにも触れることができました。

校長歴史を学ぶことは大切です。しかしそれ以上に顔を合わせ、対話することが平和につながるという証ですね。平和教育に加え、これから本校が最も大切にしたいと思っているのが、多様な学びを通じて豊かな教養を育む「リベラルアーツ教育」です。本校生には、その人生を輝かせるために、机上の「学び」はもちろん、スポーツや文化・芸術など、幅広い学びを大切にして欲しいと願っています。高校時代の乾さんは、学業もおろそかにしなかったですね。

シンクロナイズドスイミングと勉強の両立は大変でしたが、今になってよかったと思うのは、「学ぶ意欲」や「勉強に臨む姿勢」が身についたことです。大学に進学したり、社会に出たり、新しい環境に身を置いた時、自分を成長させるには、新しいことを吸収する力が必要です。勉強を通じてそうした力を養うことができたと感じています。

校長乾さんは本当に輝いた高校生活を送ってくれていましたね。私は、高校時代というのは人生の「マジックアワー」だと思うのです。「マジックアワー」というのは最も美しく写真撮影できる日の出前と日没後のわずかな時間のことだそうです。本校生が「マジックアワー」と呼べる、輝く高校生活を送ってくれるために、後輩たちへのアドバイスをお願いします。

今振り返ると、先生方をはじめ近江兄弟社高校に守られていたから、思う存分シンクロナイズドスイミングに打ち込めたのだと思います。近江兄弟社高校でならきっと、失敗しても、何度でもやり直すことができます。だから後輩の皆さんにも失敗を恐れず、さまざまなことに挑戦してほしいと思います。

校長これから東京オリンピックまでの日々をぜひ乾さんの新たな「マジックアワー」にしてください。ご健闘を心から祈っています。

乾 友紀子
1990年近江八幡市生まれ。幼稚園・小学校・中学校・高校と15年間ヴォーリズ学園(旧近江兄弟社学園)在学。幼稚園の時にシンクロナイズドスイミングに興味を持ち、小学校1年に滋賀のシンクロクラブへ。小学校6年で大阪の井村シンクロクラブに所属。片道2時間、毎日練習に通い続けた。 2006年、ロシアでの世界ジュニア選手権大会で、ソロ・チーム・フリーコンビネーションで銅メダル。2012年ロンドンオリンピック初出場。デュエット・チーム5位入賞。 2016年リオデジャネイロオリンピックに主将として参加、デュエット・チームで悲願の銅メダルを獲得。現在、2020年開催の東京オリンピックに向けて、日々厳しい練習の毎日を送っている。
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